看護師の業務範囲は、さまざまで多岐にわたります。
看護師が行う医療処置のひとつに注射がありますが、資格が必要なのでしょうか?
「注射って資格必要だったかな?」
「注射の種類によって資格が必要なものがあるの?」
注射業務の範疇をちゃんと理解して業務をしているのか、不安や疑問が出てくることもあるでしょう。
本記事では、看護師の注射業務の範疇についての下記の2つについてまとめています。
- 看護師に必要な注射の資格はない!
- 看護師が注射の資格が必要ではと勘違いされる理由とは?
保健師助産師看護師法をもとに、分かりやすく解説します。
ぜひ、最後までご覧ください。
看護師に必要な注射の資格はない!
看護師として行う業務のなかで、注射は当たり前のように行っている人がほとんどではないでしょうか?
しかし、注射とひとことで言っても静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、ワクチンなどさまざまありますよね。
ときどき「これって法令上本当に問題ないよね?」と不安になることもあるでしょう。
結論からいうと、看護師が行う注射業務に資格は必要ありません。
看護師の行う業務については、保健師助産師看護師法という法令で定められています。
保健師助産師看護師法のなかで、看護師は「傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者」とされています。
療養上の世話とは、排泄の援助や食事介助など患者が療養生活を安全かつ安楽に過ごすことができるよう補助することですね。
診療の補助とは、採血や薬剤の投与など医師の指示に基づいて行う医療行為のことをいいます。
注射業務は薬剤の投与という医療行為であり、診療の補助に該当するため実施することが可能ということです。
では、医療行為という観点についてもう少し詳しくみていきましょう。
保健師助産師看護師法の第三十七条では、下記のように記されています。
「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。
ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない」
上記で注意しなければならないのは、勝手な判断で注射を行うことはできないという点ですね。
看護師も注射をすることは可能ですが、必ず医師または歯科医師の指示のもとでしか行うことはできません。
薬剤の量や投与時間を間違えると人体に危害を及ぼすおそれがあるため、注射の内容、投与方法、時間など、6Rをしっかりと確認して行いましょう。
上記の6Rとは与薬原則のことで、看護師が確認すべきこととされています。下記にまとめました。
①正しい薬物(Right Drug)
②正しい量(Right Dose)
③正しい方法(Right Route)
④正しい時間(Right Time)
⑤正しい患者(Right Patient)
⑥正しい目的(Right purpose)
看護師は患者の症状や状態を観察し、アセスメントすることも大事な役割ですよね。
医師の指示があったとしても、患者の状況によって本当に必要なのか、投与しても大丈夫なのか考えることが重要です。
もちろん薬剤の内容の変更は医師の判断になりますが、日々近くで患者の変化を看ているのは看護師です。
「内服や点滴の内容を変更しなくて大丈夫なのか?」ということも含めて、アセスメント、報告、相談のできる看護師を目指しましょう。
看護師が注射の資格が必要ではと勘違いされる理由とは?
注射を行うのに、資格が必要ではないかと勘違いされている理由を知っていますか?
実は、昔は静脈内注射を看護師が行うことが法令上で認められていなかったのです。
では、いつから看護師も注射を行うことが認められたのでしょうか?
医療行為について、医師法の第17条では以下のように記されています。
「医師でなければ、医業をなしてはならない」
昭和23年に制定された介護保険保健師助産師看護師法でも「静注射は医師または歯科医師が自ら行うべき業務であって、看護師の業務の範囲を超えるものである」とされていました。
しかし、実際は医師が看護師に指示をすることが大半で、診療の補助ということで看護師が静脈内注射を実施していたようです。
法令で明確な規定がない状態のまま、グレーゾーンで看護師が注射を行っている現状があったということですね。
平成14年9月に行われた新たな看護のあり方に関する検討会において、看護師等による静脈内注射の実施について議論されています。
看護教育の水準向上、医療器材の進歩、医療現場の実態と分離した状況を踏まえて、看護師の静脈内注射は医師の指示に基づくものであれば診療の補助行為の範疇として取り扱われるべきだと見直されたのです。
こうして議論をした結果、平成14年に静脈内注射が法令でも正式に看護師が行ってもよいと定められました。
看護師が行える注射は、筋肉注射、皮下注射、皮内注射、静脈内注射になります。
看護師が行えない注射はあるのでしょうか?
眼球注射などは、看護師は行うことができません。
準備や機械出しなどの介助と、注射後の通院について患者へ説明するのは看護師が行います。
一般の病棟で眼球注射を行うことはありませんが、覚えておくといいかもしれませんね。
さいごに
看護師が注射を行うのに資格が必要か、保健師助産師看護師法をもとに解説しました。
現在は当たり前のように実施されている注射業務ですが、昔は法令上で認められていなかった時代がありました。
法令の改定とともに、看護師が行うことができる業務は増えつつあります。
もちろん「医師の指示のもと」ではありますが、在宅医療も増えてきた現代では看護師の役割が大きく求められる時代です。
自分が行う業務が法令で規定されている業務範囲を超えるものでないか、きちんと理解した上で業務が行えるようにしましょう。
分からないことはそのままにせず、現在の法令がどうなっているのか確認することも大切ですね。
本記事が、看護師が注射を打つため資格が必要かを知りたい人の参考になれば幸いです。
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